どうもまつりです!!
今回も「きみを死なせないための物語」6巻感想です。
「きみを死なせないための物語」第6巻
作者 吟鳥子/作画協力 中澤泉汰
表紙
表紙はリュカとナナ。そして謎のカラフルな髪の男、ラクリモサ。ジェンダーレス感のある見た目ですね。体型的に男性だとわかりますが、中盤で「素敵なショウのお仕事」と言っているのを見るとドラァグクイーンのようにも思えます。
「ラクリモサ」と調べてみると、小惑星帯の中ので一番大きな「小惑星」だそうです。この小惑星の名前は「イエスの母マリア」に贈られた称号「悲しめる我らの貴婦人(悲しみの聖母)」にちなんで命名されたそうです。
「リュカ」の名前もしかしたらと調べてみると「リュカ数」なるものを見つけました。フランスの数学者「エドゥアール・リュカ」にちなんだ数列が「リュカ数」というらしいのです。
リュカに近しい情報として、「天文学を学んでいた」「計算機のない時代だったので手計算をしていた」「珍しい死に方をしてわずか49歳で亡くなった」というのが出てきました。
かなり作品の中のリュカに近いと思います。
ナナについても調べてみましたがこれやもしれないと思うものを見つけられず、、、
リュカについては憶測ですが、ラクリモサの名前だったり、旗のデザインの意味だったり、漫画のあらゆるところに知識の豊富さを感じます。今の時代ネットで調べれば情報なんてごまんとありますが、知識として自分の中のひきだしから取り出して、取捨選択していく。もともとあるから引き出せる知識だと思います。
極彩色と真っ暗な闇
潜入捜査をしているアラタ。京都コクーンの道端で座っていると派手な男に話しかけられます。
マスクをしていないアラタには見える色。共感覚のアラタには京都コクーンこそマスクが必要な気がしますが、怪しまれないために外しているんでしょうね。この色が「京都コクーン」そのものな気がします。
ストリップバーのような場所、この世界観には異質な場所ですね。全員が「違法生存者」なのでしょう。天上人が取り締まらないのはお情けなのか、何かメリットがあるのか、シティカメラを設置していないのもそのほうが管理が楽だからでしょうか。
6巻の後半、「東京タワー」の秘密を知るアラタ。点と点が線になっていく様はゾワっとしますね。秘密の内容にもあると思いますが。
京都コクーンの一部はこの「秘密」を知っている人ばかりでなのでしょうか。
老翁に欲しいかと尋ねられたアラタは、天上人に自分の「望み」を知られたらタダでは済まないと、過去に「リュカ」を巻き込んだ事件を言い出します。
俺は俺の夢にもう誰の人生も巻き込みたくない。
もうリュカみたいな・・・
「きみを死なせないための物語」第6巻 (作者 吟鳥子/作画協力 中澤泉汰 秋田書店)より引用
アラタが「冷たく」感じるのはこの部分なのかなと思いました。
頼られないというのは寂しいことだと思います。信用されていないと感じることもあります。本人は迷惑をかけたくないということかもしれませんが、巻き込まれてもいいと思う相手もいるということ。
それを迷惑に感じるかどうかは相手次第。それでも関わりたいと思うのも相手次第。最初からすっぱりと切られてしまうのは存在しないのと同等な扱いなのではとすら思えてしまう。
契約がないから、迷惑をかけたくないから、どちらも人と関わらないと決めていることがアラタの「冷たさ」「壁」を感じたのかもしれません。
シーザーの決断とルイ
ダフネー誘拐事件後、シーザーの部屋にいたジジはそのまま部屋にいることになります。
ジジは、シーザーとルイの関係をわかっていなかったあの頃の時間が止まって欲しかったと悲しそうに言います。それをシーザーはルイとの関係は今はどういう関係でもないと言います。
セカンドパートナーという関係を「親が決めた正式なパートナー」で「猥雑ではない」といいますが、ジジが意味のない誤魔化しに呆れた顔をしています。
シーザーは常にこのことを話しますね。ルイとは契約外な「猥雑な関係」だった故に正式なということを誇張したいのでしょう。コクーンのルールを守っていないという後ろめたい気持ちが強いのでしょうね。
ターラの急な生殖パートナーの話に戸惑うシーザー。それを聞いたジジは何も持っていないからシーザーに犠牲になってほしくないといいます。
ダフネーは誰かに頼らなければ生きていけないです。それに伴う代償を求めることなどされなかったはずなのに、ターラの話を聞いてジジが何も犠牲してほしくないと考えるのは、「本当に何も持っていない」ということ自分自身でわかっているから。ターラが必死に犠牲なろうとしているから。
ジジの本音がシーザーの気持ちを動かします。
ジジとのサード契約を決めた後に部屋の前でルイと会います。状況を知らないルイは強くシーザーを詰ります。その言葉に正論ではあるものの思うところのあるシーザーはルイを諭すとルイを置いて部屋に入ってしまいます。
シーザーを突き放していたルイですが、シーザーに置いてかれた手が虚しく残ります。
あれだけルイに執着していたシーザーだっただけに、ルイは戸惑っているよな焦っているような顔をしていますね。
常に自分が正しいと考えてきたから、シーザーの含みのある言葉についていけていないような感じがしています。
ジジとシーザーのサード契約のお祝いするときも、真実を知った上で嫌味をかましてくるところはルイの強がりなような気もします。
あれだけ嫌がっていたのに、いざシーザーがジジと契約するとなり思いもよらない感情に気づいたのでしょう。
ルイにとってシーザーはある意味、都合の良い存在だったのないでしょうか。
表面的には煩わしく感じていたとは思いますが、「親が決めたセカンドパートナー」のおかげで命拾いしていますし、契約を切った後も、シーザーの執着があったとはいえ「契約外の関係」を望んでしていると思います。
「リュカの事件」を知り、シーザーを突き放したのはルイですが、心のどこかで離れていかないとたかを括っていたのではないでしょうか。自分の手中にある存在なのだと。
そんなルイにおめでとうを言われたシーザーはそれでもどこか切なそうです。
6巻感想を書いてみて
京都コクーンは思っているよりコクーン的に無法地帯でしたね。そんな象徴のような「ラクリモサ」
ラクリモサは社会的価値はある程度あると思いますが、素行や考え方的に京都コクーンじゃないと生きていけなかったのでしょう。
中盤、ジジが「誰も知らない風景(ヴィジョン)」の話をしていますね。老翁も祇園さんが死に際にどんな「ヴィジョン」を見たのかと言っています。誰かに教わったわけでもないのにダフネーたちは秘密にしなきゃいけないとわかっているのは本能的なものなのでしょうか。
このシーンはなんとなく不思議なシーンだと思いました。ファンタジーではあるものの、ルールに沿った世界観だと思います。しかしこの「ヴィジョン」が出てくるシーンは少しそこから外れているような特殊なシーンな気がしています。物語の中でもダフネー達は不思議な存在なのかもしれません。
徐々に真実に近づいているアラタ達。天上人たちが隠している「真実」とはなんなのか
これはきみたちを死なせないための物語
この真実に人類はきっと耐えられない
「きみを死なせないための物語」第6巻 (作者 吟鳥子/作画協力 中澤泉汰 秋田書店)より引用
今回はこの辺でまつりでした!
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